7/28(火) チャリティイベント「うんこミュージアムを生み出した面白法人カヤックがその大ヒットの裏側を語る」がZOOM開催されました
2019年、横浜に「うんこミュージアム」が誕生しました。来場者数は50万人を突破し、お台場、果ては上海にまでその勢いを広げています。日の目を見ることがなかなかなかった「うんこ」に着目し、ミュージアムを大ヒットにつなげたのが面白法人カヤック(アカツキライブエンターテイメントとの共同企画)です。この面白法人カヤックの創設者は、慶應義塾大学環境情報学部96年卒、そして、「うんこミュージアム」のクリエイティブディレクターは同学部98卒。「うんこミュージアム」ができるまでの裏側と、「うんこ」にこだわり続ける彼らの秘密に迫ります。
■登壇者のプロフィール
・柳澤大輔(96環) 面白法人カヤック代表取締役CEO
柳澤
面白法人カヤックの代表取締役CEO、柳澤大輔です。慶応義塾大学の環境情報部に在籍し、1996年に卒業しました。その後ソニー・ミュージックエンタテインメントに入社し、2年後に大学時代の友人3人とともに現会社を設立ました。2014年にはマザーズ上場を果たし、さまざまなサービスを提供・運営しています。
・後藤裕之(98環) 面白法人カヤックプロデューサー 元円周率暗唱ギネス記録保持者
後藤
企画部プランナー・ディレクターの後藤です。柳澤と同じく、慶応義塾大学環境情報学部に1992年から在籍していましたが、僕は卒業まで6年半かかりまして、1998年同学部を卒業しています。
卒業後は株式会社ナムコ(現バンダイナムコ)に入社し、代表作でもある「ことばのパズル もじぴったん」シリーズなどを手掛けました。2011年からカヤックでゲームプランナー、ゲームのメインディレクターとして働き始め、スマホのクイズゲーム「冒険クイズキングダム」などを手掛けています。
そんなこんなで、「教育と娯楽を掛け合わせたゲームを作る」というテーマでかれこれ20年くらい、ゲーム開発に携わっている人間です。よろしくお願いします。
柳澤
後藤君は面白いエピソードをたくさん持っている人で…元円周率暗唱ギネス記録保持者なんだよね?
後藤
はい。さっき「卒業するのに6年半かかった」と話したんですが、実は僕、初めのころはほとんど大学に行ってなかったんですね。当時はテレビ制作会社でバイトしていまして、学校をやめてそこで働こうかなと思っていて。そんなとき、ひょんなきっかけから「円周率を覚えよう」というテレビ企画をやることになり、1年くらい学校にも行かずずっと家で円周率を覚えるということをしていました。その結果、実に42,195桁を暗唱できるようになりまして、これでギネス新記録を達成したんです(笑)。その直後にSFCから電話があり、「SFC AWARDを受賞した」という連絡が入って、「こんなことにも価値を認めてくれるんだ!」と感動したんですね。そこから少し心を入れ替えて、無事卒業したという経緯があります。 この経験は、「どんなにくだらないことでも価値を見出してくれる人はいるし、それをより価値あるものにしていくのは、その後の自分の行動次第だ」という学びにつながったし、うんこミュージアムにもつながる考え方だなって思ってますね。
柳澤
無理やり・・・笑。では次に、うんこミュージアムを直接つくっている人間である阿部さん、お願いします。
・阿部晶人(98環) 面白法人カヤッククリエイティブディレクター
阿部
カヤックでクリエイティブディレクターをやっています、阿部と申します。僕もお二人と同じく環境情報学部で、98年卒の5期生になります。趣味は剣道で、大学時代に世界初の剣道ホームページを作ったこともあり、今は全日本剣道連盟情報小委員会の委員長もやっています。
カヤック入社まで、電通→外資系広告代理店→イベント会社を経ていますが、その間に無職期間もありました。「なんで無職期間を?」という話なんですが、さっき言った通り僕は剣道がすごく好きで、剣道世界大会を日本に誘致をしてたら成功しちゃったんですね。それで、そのお手伝いをするために一回無職になりました。結果的に剣道世界大会は日本武道館で無事開催することができまして、その後いろいろあって今、うんこの仕事をしています。よろしくお願いします。
■「うんこに2,000円弱も払うバカはいない」
柳澤
実はうんこミュージアムをやる前から、カヤックでは「うんこ演算」というアプリを開発しているんだよね。
後藤
そうなんですよね。そのあとに「うんこ漢字ドリル」がブームになったりもしていて。僕はうんこミュージアムの立ち上げには直接かかわっていないんですが、それでも立ち上げ時には「うんこがテーマのエンタメに2,000円弱も払うバカはいない」と言われていたとか…。
阿部
そうですね。今でも誰がそう言ったかまで覚えてます(笑)。でも結果的に、来場者数50万人を突破する空間を作ることに成功しました。
■仕事の鉄則を当てはめて学ぶ、「うんこミュージアム」ができるまで
阿部
うんこミュージアムを簡単に説明すると、『入り口で大声で「うんこ!」と叫び、カラフルな便器に座って自分だけの「MYうんこ」をもらったら、それを持って館内の様々なエリアをめぐり、色とりどりのうんこと写真を撮ったり、クソゲーをやったり、うんこを踏んだりして楽しめる空間』です。
うんこミュージアムは、その成り立ちもふくめて「固定概念を水に流す」というワードが裏テーマとしてあると思っていて。あらゆる仕事の鉄則を破ってできあがっているので、今日はそのお話をしたいと思います。
- 仕事の鉄則①仕事はよく選ぶべし?
阿部
「うんこミュージアム」のきっかけは、「今度、横浜駅のビルを買い取って娯楽ビルにしようと思ってるから、その一部で何か面白いことやりませんか?」と連絡をいただいたことなんです。でもそのときカヤックは繁忙期、もう本当に1つも仕事を増やしたくない!ってくらい忙しいときで。にも関わらず、「はい、喜んで!」って即答していて、翌日には現地施策に行きました。
柳澤
初っ端から全然仕事をちゃんと選んでない(笑)。その頃はまだ「うんこ」ってテーマはなかった?
阿部
なかったですね。勢いで始まったところがありました。
- 仕事の鉄則②企画の決定には慎重に時間をかけるべし?
阿部
それで実際、何をしようかという話になって。企画って、実現可能性とかも加味して、最終的には分厚い企画書を作って…というのが自然な流れですよね。
でも「うんこミュージアム」の初回の企画書って、ペラ1だったんですよね。信じられない話なんですけど、これがその時の企画書です。
柳澤
(爆笑。)提案する方もやばいけど、採用する方もやばいね(笑)。
阿部
僕らとしては「うんこ演算」をリリースしている実績もあったので、ペラ1とは言え真剣にやりたいアイディアではあったんですが、それにしてもこんなに早く決まるとは思ってなかったですね。しかも、提案のたびに「面白いからエリア坪数増やそう」ということになって、最終的に45坪から180坪になりました。
- 仕事の鉄則③軽薄な言葉遊びはするな?
柳澤
「うんこミュージアム」のビジョンってなんだったっけ?
阿部
「That’sウンターテイメント!」です。まあ、ダジャレです。ミュージアム内のエリアにも、「ウンスタジェニックエリア」とか「ウンテリジェンスエリア」とか、とにかくうんこにかけた名前にしました。ちなみにキャラクター名称は「ウンベルト」です。
柳澤
これ、お客さんも受け入れてくれた?
阿部
ネット上でつぶやいて喜んでくださったり、キャラクターのLINEスタンプが盛り上がっていただいたりしました。「ビジョンにダジャレなんてありえない」「崇高なビジョンを掲げてプロジェクトを進めるべきだ」って考え方には全く沿ってないんですが、こうした言葉でプロジェクトの空気感を作ることができたし、力を抜きながら面白いコンテンツを作れたかなと思います。
■唯一破らなかった鉄則 ~うんこにしっかり向き合う~
阿部
こんな感じでいろんな仕事の鉄則を破ってきてはいるんですが、ひとつだけ破らなかった鉄則があって。それが「企画にしっかり向き合う」っていう鉄則です。ここでいう企画というのは、うんこのことです。
やっぱり、うんこを甘く見るとだめなんですよね。うんこってすごくパワーがあるから、全力でバカをやり抜かないと勝てないんです。
あと、うんこってついつい汚い方向に向かってしまいがちなんですが、それを面白がっちゃいけないと思っていて。合言葉である「MAX可愛い」というのを徹底することで、帰るときには普通に「うんこ」と言えるようになる魔法をかけたいと思って真剣に向き合いました。
チームとしては、「全員うんこ合宿」というのを定期的に行ったりだとか、LAまで視察に行ったりだとか、メンバーの意識をそろえるためにいろいろな工夫もしましたね。
■50万人来場、海外進出…「うんこミュージアム」の想定外の反響
柳澤
うんこのためにLAまで行くってなかなかできないよね(笑)。
阿部
まあ、ないですよね。でもそうして培ったチームワークもあり、うんこミュージアムはおかげさまで多くの反響を呼ぶことができました。まず冒頭で言ったように、来場者数が50万人を突破。正直ここまで来てくださるとは、メンバーの誰も予想していなかったと思います。
それだけでなく、グッドデザイン賞を受賞したり、TVや雑誌のインタビューの依頼をいただいたり…本当に想像以上の反響がありましたね。
柳澤
実は僕、まだ行ったことないんだけど・・・・・。何が一番人気なの?
阿部
え!なんで行ってないんですか(笑)?
一番人気なのは「うんこシャウト」ですね。マイクに向かって「うんこ」と叫んだら、その声の大きさでうんこが前の映像に出るアトラクションです。
柳澤
コンテンツもいろんなクリエイターの方に依頼をさせてもらってますよね。テーマソングをTofubeatsさんに手がけていただいたり。実際、「うんこ」をテーマにお願いしたクリエイターの方の反応ってどうだった?
阿部
さっき言ったように、うんこってすごくパワフルで、ちゃんと立ち向かう覚悟がないとうんこに食われちゃうってことが起きるんです。だからこそ、そういう覚悟と自信のある方が依頼を受けてくださったという印象ですね。僕としても、うんこミュージアムが人生で一番大きい挑戦だったなと思っています。
柳澤
今後のうんこブームの行方を見ながら、これからも真剣にうんこに向き合っていきたいですね。
「固定概念を水に流す」という裏テーマにふさわしく、予想外だらけだった「うんこミュージアム」の裏側。立ち上げ人である阿部さんは、「SFCの自由な雰囲気がこうした価値観を培ってきた面もある」と語ります。いまや一般化しはじめた「カワイイうんこ」ブーム、今後も盛り上げてくれることに期待です。