翟 原さん(奨学生:商学部2年)「作りたいものは、スキップで飛ばされない楽しい広告」

1996年三田会の卒業25周年事業として、コロナ禍で学業を続けることが困難な後輩を支援するべく寄付金を集めています。商学部2年生の翟 原(ZHAI YUAN)さん(以下 タクさん)は、中国・河南省からの留学生です。コロナ禍とお父様のご逝去が重なり、非常に厳しい状況になられたタクさんは、奨学金を申請し、現在も学業を続けられていらっしゃいます。タクさんに、現在の状況および未来への想いを伺いました。

(インタビューアー 湧永 寛仁・柴田真規子)


翟 原(ZHAI YUAN)さん 商学部2年生(取材当時)

慶應は、おしゃれなイメージ!

湧永:まずタクさんの子ども時代を教えていただけますでしょうか?

タク:ずっと中国で生活を送っていたのですが、当時は勉強するより絵を描いたり本を読んだりすることが好きで、高校時代になってから勉強に力を入れました。小さいときは遊ぶことが大好きでした。

湧永:大学に行く前、そもそも日本か中国かという選択肢がありますよね。なぜ日本に行こうとしたのでしょうか?

タク:自分の趣味は文章を書いたり絵を描いたりという、クリエイティブな活動です。日本の様々な文化は中国の若者に浸透していて、すごく親しみを持てる感じがしましたし、クリエイティブだったので、留学を決めました。日本の絵や音楽や芸術品は、とても好きで、親しみを持っています。

湧永:中国の若い方は日本の絵や音楽やデザインに親しんでらっしゃるのですか?

タク:主にアニメやドラマです。私は小さいころから日本の純音楽、歌詞がない音楽など、とてもきれいな音楽を聞いてそこから憧れ始めました。

湧永:慶應を選ばれたのはどうしてですか?

タク:有名でおしゃれさを兼ね備えている大学は慶應しかないかなと。

柴田:実際の印象はどうでしたか?

タク:大学の先生も、授業も面白いし、そしてみんなスタイルがいいです(笑)。おしゃれな雰囲気が好きです。

柴田:授業は、面白いんですね。

タク:とても面白いです。さらに深く調べたいと思うことが多いです。

柴田:図書館で調べたりするんですか?

タク:ネットで調べたり、面白い本があったら図書館に行って借りたりしています。

柴田:今一番関心のあることって何ですか?

タク:たくさんあります。

湧永:素晴らしい!

タクさんのノート

入学後に父親の重い病気が判明し、奨学金を申請

湧永:大学生活の中、今回の趣旨となる奨学金をタクさんは申請されたわけですけども、奨学金申請の背景について教えていただけますか?

タク:慶應義塾大学に入る前は、親が支えてくれたので心配はありませんでした。でも入学後に父が重い病気を持っていることが分かり、それからはとても不安定になりました。父が突然倒れて病院に入院して、母が看病に行って仕事ができないような期間が長かったのです。入学前は心配なく自分で自由に学んで、遊んでという感じでしたが、入学後に父の体が悪くなり、入学当時は思っても見なかったようなことが多くおこりました。

湧永:お父様の看病でお母様もお仕事が難しくなってきた中で奨学金を申請されたのですね。

もっと早く成長して、人を助けたい

湧永:私たち96年三田会は、後輩である現役学生に、コロナ過で厳しい中、「未来に向けて勉強してほしい」「これからもっと社会に貢献できるように成長してほしい」という思いで、寄付金を募っています。その奨学金を受けられて、その前と後で変わったことなどがありますか?タクさんにとって、奨学金があってとてもよかった、というところを同期へ伝えたいと思っています。

タク:最初に奨学金をいただいた時は、この1年もっと勉強に集中できる、と感じました。いただく前は、自分を支えるために2個目のアルバイトをしなければならないと、いろいろアルバイトを探しました。でもこれをしなくてもいいので、今はもっと時間を勉強に使えるようになりました。心理的なストレスがすごく減りました。そして気持ち的には、助けてもらったという感じで、もっと勉学に励まなきゃ、という気持ちも沸いてきて、勉強への情熱も高まりました。そしてこのような時に助けてもらえるのがとてもありがたくて、もっと自分が早く成長して、将来自分の後輩も助けられる人になりたいという気持ちを深く持ちました。

湧永:素晴らしい!本当に素晴らしい!!後輩の助けにもなりたいという気持ちが、今の時点で芽生えているってすごいですね。

タク:助けていただいていますから、感謝の気持ちがあって。後輩の中でも私のような状況にいる人も絶対いて、後輩の中の私のような状況の人も助けたいと思います。

柴田:このインタビューを受けてくださるというのも、非常にありがたいなと思ったのですが、受けようと思った理由はありますか?

タク:感謝の気持ちです。

柴田:そうなんですね。ありがとうございます。

タク:こちらこそありがとうございます。

柴田:その気持ちをみんなに伝えられるようにしたいと思います。

作りたいものは、スキップで飛ばされない楽しい広告

湧永:将来は、どのようなお仕事を考えられていらっしゃるのですか?

タク:将来の可能な進路をいろいろ探ってみて、広告業界に進もうという結論に至りました。なぜなら、創造的な、いつも頭を使って新しいものを作るのがとても楽しいことなので。番組や、文章書いたり、絵を描いたり、いろいろありますが、特に広告というものはほんの何秒かの間にすごく情報量を突っ込んで、みんなの目を奪うような感じが、とてもチャレンジングで、それを作ることができる人はとても頭がいい人たちだなと憧れています。

湧永:日本の広告の印象は、いかがですか。

タク:日本のコマーシャルは面白い、何度も見たいです。

柴田:どの商品を売りたいというよりは、様々な商品を、みんなの心をつかむような広告で宣伝できたらいいな、という感じですか?

ク:はい、そうです。

柴田:でもそれは映画とかドラマではなくて、広告なのですか?

タク:やはりみんなが一番見ている広告を、できるだけ楽しくしたいのです。ドラマなどの番組だけが面白い、広告は負担のような、面白くないという印象を変えたい。いろいろな番組を見終わって広告のターンに入ってもみんな楽しいというイメージです。

湧永:なるほど。ネットとか見ていると、広告見ると、スキップしちゃえ、とかありますよね。むしろ広告見たいな、というような。

タク:はい。

柴田:よく分かりました。むしろドラマとか小説よりも、広告の表現が一番時代の最先端を行っている、というところに魅力を感じているわけですね。

タク:はい。

柴田:すごくいいお話を聞けました。広告への熱い思いが伝わってきました。

コロナ禍、リモートメインの学校生活やアルバイト

柴田:今2年生ですよね。コロナの影響は、ありましたか?

タク:はい、コロナの影響ですぐに戻れないということがありました。

湧永:タクさんは入学したときからコロナ禍だったのですよね。友達に会える機会はなかなかなかったですか?

タク:クラスメートたちと触れる機会はすごく減りましたけど、会う機会はまだありました。今は中国に滞在していて、来月日本に戻る予定です。

柴田:なるほど。じゃあ9月の授業は中国からリモートで受けてらしたということですか。

タク:はい、そうです。全部リモートです。

湧永:自分の実家に戻っているんですね。

タク:はい。

柴田:よかったですね、お母様のそばにもいられて。アルバイトはどんなことをなさっているんですか?

タク:中国の留学生を教える塾講師です。

湧永:もう後輩を教えてらっしゃるんですね。

タク:日本の地理とか政治、経済とかいろいろなものが入っている総合科目を教えていて、自分の日本への理解も深まっているような感じで、楽しんでいます。

柴田:教えながら自分も分からなかったことが分かって、ということですね。良いアルバイトが見つかりましたね。

本当に大きな助けとなりました

湧永:最後に、われわれの同期に向けて何かタクさんからメッセージをお願いできますでしょうか?奨学金を受けて、ということでぜひ一言お願いできればと思います。

タク:ご支援をいただいただいたことが、私にとって本当に大きな助けとなりました。それによって今は勉強に集中できるようになりました。これからもっと学業に励んで、より立派な人、より能力の高い人になれるように毎日努力していきます。どうもありがとうございました。

湧永:ありがとうございます。われわれの寄付がタクさんのような人の役に立っていて、私たちとしてもとても光栄です。

柴田:でもあまり気負わずに、楽しんでください。そういうところも忘れずに過ごしてくれたらと思います。ありがとうございました。